ゲームを作るのっていくらかかるの?【ソーシャルゲーム編】
こんにちは、あまみやです。
今回は前回から引き続き、ゲームを作るのにどの程度お金がかかっているのかについて、考えてみようと思います!前回の記事をまだ見ていない方は、こちらからぜひご覧ください!それでは早速本題にいきましょう!
ソーシャルゲームの制作費
今回はこちらのソーシャルゲーム「ドラゴンクエストタクト」(以下、ドラクエタクト)を例に、開発費を概算してみようと思います。数あるソーシャルゲームの中からドラクエタクトを選んだ経緯には、以下の3点の理由があります。
- 最近リリースされた大作ソーシャルゲームである(リリース日:2020年7月16日)
- 一般的なソーシャルゲームの形式を取っている(基本無料、ガチャあり、スタミナ制)
- 決算資料から開発費を概算しやすいソーシャルゲームである
まず、ソーシャルゲームの開発費は、年を追うごとに増加の一歩を辿っています。そのため、数年前にリリースされた大作ソーシャルゲーム(パズドラやモンストなど)は、現在の大作ソーシャルゲームと比べて、比較的安価に作られている傾向があります。
また、近年はポケモンGOや原神、荒野行動などガチャをメインとしないソーシャルゲームが存在します。これらのソーシャルゲームは、一般的なソーシャルゲームと収益の上げ方が異なるので、今回は一般的なソーシャルゲームの形式を取っているドラクエタクトを選ばせていただきました。
さて、このドラクエタクトですが、制作費としていくらかかっているのでしょうか?
ドラクエタクトの制作費は27億円程だと推測します。
なぜ27億円だと推測したのか、そしてその内訳はどうなっているのか、ドラクエタクトを開発したAimingさんの決算資料と共に見ていきましょう!
【参考資料】
2020年12月期 第3四半期 Aiming 決算説明資料
2020年12月期 第3四半期 Aiming 決算短信
2020年12月期 第2四半期 Aiming 決算短信
人件費
まず、ゲームを作るためには人が必要です。現在Aimingには409名の従業員が在籍していると記載されています。彼らはいつからドラクエタクトの制作に携わっていたのでしょうか?
ドラクエタクトは2020年2月に発表されているため、開発はそれ以前から始まっていたと考えられます。大規模ソーシャルゲームの開発は2~3年かかることもあるのですが、今回は制作費の計算がしやすいように、2020年1月1日からドラクエタクトの制作を始めたと仮定をして、話を進めていきましょう。
ソーシャルゲームでは、ゲームをリリースした後も多くの人手が必要になります。新規キャラクターの追加や期間限定のイベント発信、定期的なメンテナンスなど、ユーザーをゲームに惹きつけるための施作を継続的に行なう必要があります。
そのため、すでにリリースしているゲームの調整と、ドラクエタクトの制作、この両方に人手を割り当てる必要があります。そこで、Aimingと外注先社員の半数がドラクエタクトの制作に従事していたと仮定すると、
- 1Qの人件費 =(2.48億円 × 0.5人)+(1.37億円 × 0.5人)+(2.37億円 × 0.5人)= 3.11億円
- 2Qの人件費 =(2.35億円 × 0.5人)+(2.00億円 × 0.5人)+(1.98億円 × 0.5人)= 3.165億円
- 3Qの人件費 =(2.26億円 × 0.5人)+(1.68億円 × 0.5人)+(1.91億円 × 0.5人)= 2.925億円
人件費 = 3.11億円 + 3.165億円 + 2.925億円 = 9.2億円
と推測できます。
サーバー費
また、ソーシャルゲームで特筆すべき経費の一つに、サーバー費が存在します。
現在リリースされているソーシャルゲームの多くは、ネット通信を用いてゲームを遊ぶシステムになっています。新しいイベントに参加したり、ガチャを引いたり、オンラインで友達と遊んだりする機能は、サーバーなくして成り立ちません。
しかし、ゲームがリリースされるまでは、誰もドラクエタクトのサーバーにアクセスできないので、サーバー費は制作費としてではなく、運用費として捉えられることが多いです。
今回は、ドラクエタクトの制作費を試算しているので、サーバー費は含まずに話を進めていきます。
広告費
ソーシャルゲームにおいて広告は、最も売上を左右するといっても過言ではない力を持っています。なぜなら、多くの人にゲームを知ってもらえれば、多くの人にゲームを遊んでもらうことができ、そこから多くの課金につながっていくからです。そのため、TVCMやYoutubeCM、ウェブ広告や街頭看板など至る所に広告費が使われています。
ドラクエタクトは2020年の2月から広告を始めており、リリース直前の7月頃には非常に多くの宣伝を行っていました。そのため、1Qと2Qでは広告費全体の50%を、3Qでは広告費全体の80%をドラクエタクトの宣伝に費やしていたと仮定すると、
- 1Qの広告費 = 0.71億円 × 0.5 = 0.355億円
- 2Qの広告費 = 1.03億円 × 0.5 = 0.515億円
- 3Qの人件費 = 2.69億円 × 0.8 = 2.152億円
広告費 = 0.355億円 + 0.515億円 + 2.152億円 ≒ 3.02億円
程度ではないでしょうか。
もちろん、ドラクエタクトの広告は、ゲームをリリースした後も継続して行われていきますし、パブリッシャー(版権元)のスクウェア・エニックスさんも、別途広告費をかけて宣伝を行っていると思います。そのため、実際には見積もり額以上の広告費が使われていると考えられます。
ロイヤリティ
ロイヤリティとは、特定の商標を使用するために、その商標や著作権を持つ会社に支払う使用料のことです。
ドラクエタクトの場合、ドラゴンクエストという商標を持っているスクウェア・エニックスが、Aimingに商標を使用する権利を貸し出しています。Aimingはドラゴンクエストという商標を使わせてもらっている対価として、ロイヤリティをスクウェア・エニックスに15億円支払っています。
以上がドラクエタクトにおける主な制作費の項目となります。
まとめると、
制作費 = 人件費 + 広告費 + ロイヤリティ = 9.2億円 + 3.02億円 + 15億円 ≒ 27.2億円
程度であると推測できました。
ソーシャルゲームの売上
では、この27億円もの制作費は、基本無料の商業システムで回収できるものなのでしょうか?ドラクエタクトのリリースによって、どれほどAimingの売上が変化したか、以下の表を参照しながら考えていこうと思います。
こちらの表は損益計算書と呼ばれるもので、ドラクエタクトリリース前(2Q)の売上と、ドラクエタクトリリース後(3Q)の売上が記されています。この図をご覧いただくと分かる通り、ドラクエタクトのリリースによって、3Qの売上高が2Qより44.42億円も上がっています。
先程、ドラクエタクトの制作費は27億円と推測していました。そして、ドラクエタクトが3Qに寄与した売上高は44億円です。つまり、ドラクエタクトの制作費は、2020年7月~9月までのわずか3ヵ月間で回収されたことになります。ここからさらに新イベントや新キャラの追加などが行われることを考えると、ドラクエタクトは商業的に成功したと言えるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、ソーシャルゲームの制作において、どのくらいお金がかかるのかについて考えてみました。
コンシューマーゲームとソーシャルゲームでは、制作費の内訳や運用にかかる費用、売上を伸ばす仕組みなど、様々な場所で違いがあります。
「ゲーム好き」から「ゲームプランナー」へレベルアップするために、
「面白いゲーム」だけでなく「売れるゲーム」についても分析してみるのはいかがでしょうか?